著者名
DR. TARYN M. GRAHAM タリン・M・グラハム ※カナダの大学で、都市や公園のコミュニティについて研究している教授。
発表年月日
2015年
研究内容の要約
この研究は、都市にあるドッグラン(ドッグパーク)が、単に犬が運動する場所としてだけでなく、人間社会にどのような影響を与えているかを調査しています。
研究者は、ドッグランの「フェンス(柵)」に注目し、フェンスが持つ二つの側面を分析しました。
一つ目の側面は、フェンスが犬のリードを外して自由に遊ばせることを可能にし、それによって飼い主同士が安心して会話できる環境を生み出すことです。この交流を通じて、地域住民の間で「ソーシャル・キャピタル」(互いの信頼や協力関係)が育まれることが期待されます。
しかし、二つ目の側面として、このフェンスは、ドッグランの利用者を「内側」と「外側」に分ける境界線にもなり得ます。ドッグランの内部で強いコミュニティができると、独自の暗黙のルールや常識が生まれやすくなり、新規参加者や異なる考えを持つ人々が排除されたり、居心地の悪さを感じたりする可能性があります。
この研究は、ドッグランが「地域社会のつながりを強める場」になる一方で、「特定のグループ内の結束を固めるだけで、地域全体の分断につながる可能性」も持っていることを明らかにしようとしています。
この研究でわかったこと
- ドッグランは、多様な背景を持つ人々が集まる「第三の場所」(家や職場以外の居場所)として機能する可能性があること。犬を介した共通の話題を通じて、顔見知りや友人関係が生まれるきっかけを提供しています。
- ドッグラン内部のコミュニティが強固になるほど、独自の暗黙のルールや常識が生まれやすくなること。これにより、新規参加者や異なる考えを持つ人々が排除されたり、居心地の悪さを感じたりする場合があります。
- ドッグランの設計やルールが、地域住民全体の「ソーシャル・キャピタル」(信頼関係)を育むか、それとも既存のコミュニティとの分断を深めるかを左右する可能性があること。
日本との比較
日本の都市部では、公共の公園や広場で犬をリードなしで自由に遊ばせることは、禁止されているか、厳しく制限されている場合がほとんどです。ドッグラン自体も、海外ほど普及しておらず、多くは民間施設であったり、利用に際して厳格なルールが設けられたりしています。
そのため、この研究が示すように、ドッグランが「飼い主同士の交流の場」として機能する側面は、日本でも期待できます。
一方で、日本社会は公共空間での調和やマナーを強く重視する傾向があるため、ドッグランの運用にあたっては、ルールを厳格化しすぎるとコミュニティ形成の利点が失われる可能性や、逆にルールが不明確だと利用者間の軋轢を生む可能性が考えられます。
日本での暮らし・教育・ペット・地域づくりでどのような“考え方のヒント”として活かせるか
まちづくり・地域づくり:ドッグランに限らず、公園や広場などの公共空間を計画する際、異なる利用者のニーズをどう調和させるかを考えるヒントになります。単に物理的な空間を分けるだけでなく、ルール作りや交流を促す仕組みが重要であること、そして排他的な「内輪のコミュニティ」にならないための工夫が必要であることが示唆されます。
教育:地域で新しい活動を始める際、既存のコミュニティとの対立を避けるために、どのようなアプローチを取るべきかを考えるきっかけとなります。また、子どもたちの教育では、異なる価値観を持つ人々が共に生きるためのルール作りや、多様な利用者の視点を理解する大切さを考える材料になります。
ペットとの暮らし:ペットを飼うことは、犬の世話だけでなく、地域社会の一員として他者と関わる機会でもあること。ドッグランのような場所での交流を通じて、互いのマナーやルールを理解し合う大切さを考えるきっかけになります。
以上を踏まえて、これからのペットとの在り方や公園・ドッグランの意義の参考にするには大変貴重な論文でした!
